子育ての中で直面する「予想以上に不合理」な行動を、行動経済学の視点から分析。親が感じる子どもの行動の不思議さや笑いを共有し、理論では説明しきれない魅力を探求します。
休日にショッピングモールに行くと、よくビンゴやくじ、子供向けのミニゲームなどを開催しているのを見かけませんか?
子どもが一瞬でも興味を示すと、すかさず風船やビンゴ用紙を渡されますよね。
そして、すぐに出てくるのは、大体こんな質問です。
- 「携帯キャリアはどこを使っていますか?」
- 「月々の携帯料金はいくらですか?」
- 「ウォーターサーバーは使っていますか?」
- 「蓄電池は導入されていますか?」
という質問ラッシュ(笑)
そう、これは携帯キャリア、浄水器、蓄電池の営業なのです。
「風船をもらったし、少しくらい話を聞いてあげよう」と思ったところから始まり、
気づけば30分後、契約書にサインしている自分がいる(笑)
このような経験をしたことがある人はいませんか?
実はこの一連の流れには、心理的テクニックが巧みに盛り込まれています。
- 返報性の原理
- 段階的要請法(フット・イン・ザ・ドア)
と呼ばれる手法です。
返報性の原理とは? 営業マンが使う心理テクニック
簡潔に言うと「他人からの親切には恩返しをしなければならない」という心理のことです。
当たり前のように思えますが、営業担当者の手にかかると、これが恐ろしい武器に変貌します。最初に提供された親切と、そのお返しは実際には等価値にならないことがほとんどなのです。
つまり、たった一つの風船(数十円程度)で携帯キャリアの契約(営業担当者には数千円単位のインセンティブ)を獲得できれば、営業担当者にとっては大成功というわけです。ビンゴの用紙に至っては、コストはわずか数円でしょう。
そんな微々たる価値の親切でも、受け取った側は「話くらいは聞かなきゃ」と感じたり、「使っているキャリア」や「現在の携帯料金」を答えることくらいは問題ないと誘導されてしまうのです。
ここで会話に応じたり、キャリアや携帯料金について答えた時点で、次の段階的要請法に足を踏み入れていることになります。
段階的要請法(フット・イン・ザ・ドア)とは?営業トークの罠
こちらも簡潔に言うと、「小さなお願いから始めて、段階的に大きなお願いを通す」というテクニックです。
先ほどのキャリアや携帯料金についての質問は、確かに営業として知りたい情報ではありますが、別の重要な意図があります。それは「質問に答えさせることで、立場を明確にさせる」ことです。これを専門用語で「コミットメント」と呼びます。
人間には一貫性の原理という、一度表明したことに合わせて行動したくなる心理的特性があります。一度「月々○○円払っています」と答えてしまうと、「では当社のプランならもっとお安くなりますよ」という営業トークに対して抵抗しにくくなるのです。より安いプランを提示された場合、すぐに断る理由を思いつくのは難しいものです。
つまり、風船やビンゴの用紙は、あなたから「コミットメントを引き出す」ための巧妙な伏線だったのです。
返報性の原理対抗策
- 風船・ビンゴをもらわない(笑):これはお子さんからするとちょっと厳しい選択肢かもしれませんね。うちの子には「あれは営業だから、もらうんじゃないよ。パパを捕まえるための罠や」と教えています(笑)。
- 「風船ありがとうございます。でもこのあと予定が詰まっているので失礼します」とはっきり断るのも有効です。
段階的要請法への対策
- キャリアについて聞かれても答えない。「主人(妻)が管理していてわかりません」といった対応も効果的。
- 月々の料金も同様の対応で大丈夫です。「帰ってみないと詳細はわかりません」などと言えば済みます。
- 小さな質問にも即答しない。
- 一度答えてしまうと「一貫性の原理」が働き、次の提案を断りづらくなります。
一番オススメの対抗策
そもそも最安値のキャリアを契約しておくことです(笑)
私はこの方法ですね。たいてい会社名を答えると、営業担当者は「あぁ…」という表情で引き下がります。
さらに食い下がってくる営業担当者には「月々おいくらですか?」と聞かれるので、「数百円程度です」と。これで9割の営業担当者は諦めます。
よりタフな営業担当者は「機種の割引ができますよ!」と提案してきますが、「中古や型落ちを狙って購入しています」と答えれば、99%は「あぁ…」です。
過去に1人だけ、まだ食い下がってきた人がいました。「今のケータイを下取りに出せばSDGs的にいいですよ」と(笑)。「いや、今の携帯を使い続けた方が環境にいいでしょう」と返すと、「あぁ…」となって去っていきました。
最後の人、個人的には好きだったなぁ。ストイックさが(笑)
まとめ
営業トークは「返報性」と「段階的要請法」の合わせ技。
返報性は「もらったから返さなきゃ」という心理、段階的要請法は「一度答えたから一貫しなきゃ」という心理。似ているけど、根っこは違います。
だから風船を受け取った瞬間、すでに勝負は始まっているのです。
知識を持っているだけで、防御力は一気に上がります。
子どもに風船を渡しつつ、親は冷静に「これは心理テクニック」と気づけるかどうかが分かれ目です。風船とビンゴでキャッキャしている子どもを尻目に、親は「ははーん。これこの間米田のところで読んだやつやな」と思ったら優勝(笑)。
子どもの喜ぶ顔の横で、親が心理ゲームしているとか、シュールでいいじゃない。
ぶっちゃけ、営業担当者さんも風船あげた全員が話聞いてくれるとは思ってないと思うんですよね。堂々と風船もらって、ビジネスの話は断る。これくらいの度胸はあってもいいと思いますよ。
おまけ
たまに景品余ってるのか、ごっつい数くれる営業さんいません?
「あんた、帰ってから上司に怒られないんか?」的な。
このあたりの事情、知ってる営業さんいたら教えてください。
あれ、さすがの私も返報性の原理にやられそうになります(笑)。
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