このブログがやっていること
「できない人ほど自信がある」「損は得の2倍痛い」「マシュマロを待てた子は将来成功する」──行動経済学や心理学の話題は、SNSやビジネス書の中で驚くほど手軽に流通しています。けれど原典論文を開いてみると、そこには「本当はそこまで言っていない」「後続研究でかなり書き換わっている」という話がゴロゴロ転がっています。
構造で読み解く不合理は、その「通説と原典のあいだのズレ」を一本ずつ埋めていくブログです。二次情報ではなく、必ず原論文に戻る。そこで何が測られ、何が示され、何が示されていないのかを、順を追って読み直していきます。
4つの約束
このブログの記事は、次の4つを守って書いています。
- 原典主義──解説書やまとめサイトではなく、必ず原論文にあたります。書かれていないことは書きません。
- 誤解の訂正──ネットで流通している雑な要約を、そのまま追認しません。「よく言われる話」と「論文が実際に言っている話」を分けて提示します。
- 日常への接続──子育て、買い物、職場、テスト──読者のみなさんの「あるある」の中に、理論を落とし込みます。学問は日常から切り離された何かではありません。
- 限界の明示──「これで全部説明できる」とは書きません。論文が認めている限界、後続研究での反証、適用範囲の外側を、正直に書きます。
ヒューマンとエコノという、2人の案内役
記事の中にはよく、ヒューマンとエコノという2人が登場します。
ヒューマンは、直感で走り、読者が思いそうな疑問や思い込みをそのまま口にする関西弁の男。要するに、私たち読者の代弁者です。エコノは、そんなヒューマンの疑問を受けて、原論文に戻って一つずつ確かめてくれる落ち着いた解説役。2人の詳しい紹介はヒューマン&エコノのページにまとめています。
難しい統計や実験デザインの話を地の文だけで押し切ると、どうしても読者を置いていってしまう。だから2人に会話してもらっています。「わからん」と正直に言える役がいることが、このブログにとってはとても大事です。
こんなシリーズがあります
現在は、以下のようなテーマを原典からたどり直すシリーズを公開しています。
- プロスペクト理論シリーズ(Kahneman & Tversky 1979 ほか)──「損は得の2倍」の出どころ、S字カーブと数式、参照点依存を原典から解説。
- マシュマロテストシリーズ(Mischel 1972 → Watts 2018 → Sperber 2024)──「待てる子は成功する」神話の50年を解体しました。
- ダニング=クルーガー効果シリーズ(Kruger & Dunning 1999 → 後続の反論論文群)──「できない人ほど自信がある」がどこまで言えて、どこから言えないのかを追いました。
- 動機のクラウディングアウトシリーズ(Gneezy & Rustichini 2000 ほか)──「お金を払うとやる気が下がる」は、いつ起きて、いつ起きないのかを検証しました。
- 利用可能性ヒューリスティックシリーズ(Tversky & Kahneman 1973 → Schwarz 1991 ほか)──「思い出しやすさ」で判断するとき、効いているのは中身なのか、思い出す楽さなのかを追いました。
- リンダ問題シリーズ(連載中)(Tversky & Kahneman 1983 → Hertwig & Gigerenzer 1999 → Mellers, Hertwig & Kahneman 2001)──連言錯誤をめぐる論争を、批判と敵対的協働まで順に読んでいます。
- 研究用語・統計用語シリーズ──論文記事を読むときにつまずきがちな用語(平均への回帰、有意差・p値、効果量、RCT など)を、ヒューマンとエコノの掛け合いで一から解きほぐします。
このほか、割れ窓理論、コントロールの錯覚、ナッジとスラッジ、メンタルアカウンティングなど、単発の原典解説・用語解説も随時追加しています。
書いている人
ペンネームは米田構造。理系(生物系)の大学院を出たあと、平日は会社員として働きながら、子育ての合間にこのブログを書いています。経済学・心理学は独学です。ただ、「構造的な誤解」──事実の間違いというより、理解の組み立て方そのもののズレ──をそのままにしておくのがどうにも落ち着かない、という性分だけで続けています。詳しくは運営者ページをご覧ください。
毎回、「本当はもっと複雑やのに」と思いながら削っています。全部書いたら誰も読まない。でも削りすぎたら嘘になる。そのバランスに正解はないまま、書き続けています。
だからこの場所は、専門家の方にとっては物足りないかもしれません。厳密に書けばもっと丁寧に書けるところを、意図的にざっくりまとめている箇所もあります。もし明らかに筋の悪い書き方を見つけられたら、お問い合わせからこっそり教えていただけると、たいへんありがたいです。
読み方について
どの記事から読んでいただいても構いません。ただ、シリーズものは1本目から順に読むと、知識が「更新される」体験がしやすくなっています。「1999年にこう言われた→2002年にこう反論された→2006年にこう塗り替えられた」という流れごと追ってもらうことで、学問は結論ではなく、更新されていくプロセスなのだという感覚が残れば、このブログとしては大成功です。
全記事の一覧は、シリーズごとの読む順番とあわせてサイトマップにまとめています。
それでは、どうぞごゆっくり。