「あのゲーセンは取れやすい」は本当か?|平均回帰で考える都市伝説

真面目記事

最初に

この記事はゲーセンを批判するものではありません。

ゲーセンは子どもにとって最高の遊び場であり、親にとっては経済や心理を学べる教材の宝庫だと思っています。

そんな場所を提供していただける業界の方にはリスペクトを持っています。

ここでは「遊び場をどう切り取れば学びになるか」を探る視点で書いています。

取れやすいゲーセン、取れにくいゲーセン

先日、ゲーセン経済として、確率機の話をしました。 「UFOキャッチャーって、実は確率で管理されてるんやで」という話です。

ではその中でも「取れやすいゲーセン、取れにくいゲーセン」という巷にあふれる噂話にフォーカスして、ゲーセン経済第2弾を始めていきます。

実際に、私もよく親同士の会話で聞くわけですよ。

「新しいゲーセン、めっちゃ取れるらしいよー!」

みたいな話。でも、経済学をかじった私の頭の中では、「平均回帰」という言葉がグルグル回るわけです。

「取れやすい店」があったとして、それって…続くかい?

この記事でわかること

ゲーセンで学ぶ認知バイアスと平均回帰

  • 取れやすいゲーセン」の噂が生まれる心理的メカニズム(認知バイアスの影響)
  • ゲーセンの利益構造と、なぜ「取れやすい店」が長続きしないのか
  • 平均回帰の概念から見た、ゲーセン間の設定差が収束する理由
  • 新規オープン店の設定変化パターンと、その経済的背景
  • 親として賢くゲーセンと付き合うための実践的な戦略

ゲーセンの利益構造|なぜどこも似たような設定になるのか

すべてのゲーセンが背負う「固定費」

まず、ゲーセンがどんな費用を抱えているか見てみましょう。

【毎月必ずかかる費用】

  • テナント賃料
  • 機器リース・保守
  • 人件費
  • 光熱費(ゲーム機は電気の塊)
  • その他経費(プライズの仕入れなどはここ)

規模や賃貸契約にもよるとは思いますが、それ相応に店を開けておくだけでお金がかかるっってわけですね。

「取れやすい店」が続かない理由

では、仮に「取れやすい店」を作ったらどうなるか、シミュレーションしてみましょう。

【取れやすい店の末路】

設定を甘くする(取れる確率を上げる)
SNSや口コミで客が殺到!
客単価は下がる(すぐ取れるため)
売上は客数は2倍でも、客単価が1/3なら…
月商300万円(固定費500万円)毎月200万円の赤字3ヶ月で600万円の損失

選択肢は2つ: ①設定を普通に戻す(普通の店になる) ②そのまま潰れる

取れやすい店、持続させるのは難しいと私は思いますよ。

「取れにくい店」も同じ運命

逆バージョンも見てみましょう。

【取れにくい店の末路】

設定を厳しくする(ケチる)
SNS・口コミで悪評拡散「あそこは地雷」
客が激減 月商200万円(固定費500万円)毎月300万円の赤字2ヶ月で600万円の損失

選択肢は2つ: ①設定を甘くする(普通の店になる) ②そのまま潰れる

結局、こちらも平均に収束すると思います。

なぜ「取れやすい店」の噂は生まれるのか?|認知バイアスの罠

人間の脳は「都合よく」記憶する

実は、この噂が広まる理由は、私たちの脳の仕組みにあります。以下のような認知バイアスが関係しそうです。

【利用可能性ヒューリスティック】 思い出しやすい記憶で全体を判断する心理

  • 友達が取れた → 「あの店は取れる!」と強く記憶
  • 自分が取れなかった → 「たまたまやろ!」と忘れがち

確証バイアス 自分の信じたいことを裏付ける情報ばかり集める心理

  • 「取れやすい」と聞いた店で取れた → 「やっぱり!噂通りやん!」
  • 取れなかった → 「今日はたまたま調子悪い」

タイミングの偶然が生む「奇跡」

実際には、こんな偶然が重なっているだけかもしれません。

  1. 補充直後のラッキー
    • 店員さんが景品を補充した直後
    • 位置が取りやすい状態にリセット
  2. 確率機のタイミング
    • 前の人が散々お金を使った後
    • ちょうど「当たり」の順番
  3. 一時的な設定ミス
    • 新人バイトの設定間違い
    • 機械の不具合
  4. キャンペーン中
    • オープン直後で集客をしているタイミング
    • 閑散期で集客のため

これらはすべて一時的。継続的かと言われると、先に書いた平均回帰により一般的な取りやすさに収束すると思いますが、いかがでしょう?

ヒューマンさん×エコノさん劇場|新規オープン店の3ヶ月

【オープン初日】

ヒューマン
ヒューマン

見て見て!新しいゲーセン、オープン記念で設定甘いって!実際、さっきの子も一発で取ってたで!

エコノ
エコノ

客寄せやな。最初だけやで。

ヒューマン
ヒューマン

なんでそんな冷めてんの?夢がないなぁ。

エコノ
エコノ

夢やない、これは戦略や。最初甘くして、SNSで拡散させて、常連作って、そこから徐々に…

ヒューマン
ヒューマン

徐々に…?

【1ヶ月後】

ヒューマン
ヒューマン

この前の店、まだ結構取れるで!今日も2個取った!

エコノ
エコノ

へぇ、まだ客寄せ期間か。でも、そろそろ…

ヒューマン
ヒューマン

そろそろ何?

エコノ
エコノ

今日いくら使った?

ヒューマン
ヒューマン

3,000円。

エコノ
エコノ

2個で3,000円。最初はどうやった?

ヒューマン
ヒューマン

同じ金額で4個やった。

エコノ
エコノ

ほら、もう「普通」に近づいてる。

【3ヶ月後】

ヒューマン
ヒューマン

あの店、最近全然取れへんようになった!最初はあんなに取れたのに…店が悪どくなった!

エコノ
エコノ

違う違う。最初が異常やってん。これが「平均回帰」や。どの店も、結局は同じような利益率に収束する。家賃も、人件費も、電気代も、みんな似たようなもんやから。

ヒューマン
ヒューマン

じゃあ、本当に取れやすい店なんてないの?

エコノ
エコノ

一時的にはある。新規オープン、閉店セール、設定ミス。でも「ずっと取れやすい店」は、経済学的に厳しいと思うで?

ヒューマン
ヒューマン

でも待って。じゃあ最初の1ヶ月は実際お得やったってこと?

エコノ
エコノ

…まぁ、そうとも言える。

ヒューマン
ヒューマン

じゃあ新規オープン狙いは、あながち間違いじゃないやん!

エコノ
エコノ

短期的にはな。でも遠征の交通費とか時間考えたら…

ヒューマン
ヒューマン

細かいこと言わんとき!お得感を楽しむのも大事やろ?

エコノ
エコノ

…それも一理ある(苦笑)

本当に差があるとしたら?|平均回帰を超える構造的要因

完全に同じにはならない理由

ただし、すべてが100%同じになるわけではありません。構造的な違いは残るでしょう。

1. 立地による客層の違い

2. 経営方針の違い

3. 店舗規模の経済性

このあたりでしょうか?それでも、取れやすさの違いに大きな差は生じないと思う。

個人店の特殊ケース(でも続かないかも)

【個人経営の理念系オーナー】

  1. 「子どもたちの笑顔が見たい」
  2. 赤字覚悟で甘い設定
  3. 3年で貯金が尽きる
  4. 閉店

こういったものもおそらく存在するかもしれませんが、レアケースかつ期間限定では?

親としての賢い付き合い方|平均回帰を前提にした戦略

期待値管理|どの店も大差ないと理解する

平均回帰を理解すれば、無駄な労力を使わずに済みます。

やめるべきこと:

  • 「穴場」を探して遠征
  • 「取れる店」情報を必死で収集
  • 店による期待値の差を考える

代わりにやること:

  • 近くて便利な店を選ぶ(移動時間だって立派な機会損失)
  • 遊ぶ過程を楽しむ(第一回目の視点です)

ただし、やめるべきことと書きましたが、**穴場探しや新規オープン、イベントなどの情報を探すが楽しい!**という方もいらっしゃいます。私は全く否定しません!

そこまで含めて「プライズ機の楽しみ方」という視点もありますので、誤解のないように記載させてください。ゲーセンってあくまでエンターテインメントでしょう?むしろ正しい楽しみ方とも思ってます。考え方次第ですね。

情報の取り扱い方

「あの店は取れる」という情報を聞いたら:

  1. 時期を確認:新規オープン直後?→ 一時的
  2. サンプル数を確認:1人の体験談?→ 偶然の可能性もある。
  3. 具体性を確認:「なんとなく」→ 印象論

子どもへの説明|夢を壊さない伝え方

NGな伝え方:「どこも同じ。取れるわけない」

OKな伝え方:「今日はこのお店で全力で楽しもう!取れたらラッキー、取れなくても楽しければOK!」

知識は親の心の中に。子どもには純粋な楽しさを提供しましょう!

まとめ|平均回帰が教えてくれる、本当の「お得」

「取れやすいゲーセン」を探し回る時間があったら、子どもと一緒に遊ぶ時間を増やした方が、価値があるのかもしれません。

平均回帰の法則は教えてくれます:

  • どの店も結局似たような設定に収束する
  • 「特別」は長続きしない
  • 差を探すより、楽しみ方を工夫すべき

経済学は夢を壊すんじゃない。現実的な幸せの見つけ方を教えてくれるんです。

次にゲーセンに行くとき、「この店も、あの店も、たぶん同じ」と想像してみてください。

不思議なことに、期待値が下がった分、取れた時の喜びは倍増するかもしれませんよ?

私も「どこも同じ」と思って入った近所のゲーセンで、子どもが一発で「なんか伸び縮みするボールみたいなやつ(わかるかな笑)」を取った時、「なんやお前、ひとの想像めっちゃ超えてくるやん!!」

って、1人で盛り上がりました。経済学の知識は、喜びを奪うんじゃなくて、喜びの質を変えてくれるんです。

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