確証バイアスは本当にバイアスか?|Klayman & Ha (1987)を読む

確証バイアス 第4回 Klayman & Ha (1987) Psychological Review 原典解説
この記事でわかること

  • 「確証バイアス」と呼ばれてきた行動の多くを何と呼び直したのか
  • 「反証を探す」という言葉に混ざっている、2つの別々の意味
  • 自分の仮説に「当てはまる例」を調べるほうが、むしろ反証に当たりやすいのはどんな条件のときか
  • 第1回の2-4-6課題と4枚カード、第2回の面接の質問、第3回の証拠の読み方は、この枠組みでどう読み直せるのか

この記事は、確証バイアスの原典をたどるシリーズの第4回です。第1回では Wason の2-4-6課題と4枚カード問題で、人が自分の仮説を壊しに行かないことを見ました。第2回では、仮説を確かめるための質問が相手の答えまで仮説の方向に寄せること、第3回では、同じ証拠の評価が立場で割れることを見ました。ここまで「確証バイアス」という言葉を、いわば暫定用語として使ってきました。今回読む1987年の論文は、その用語自体を問い直します。


導入:第1回の教訓どおりに、3つの数を試してください

第1回を読んだ方は、2-4-6課題の教訓を覚えているかもしれません。自分の仮説に当てはまる数列ばかり試していると、いつまでも「当てはまる」と言われ続けて、間違いに気づけない。だから、仮説に当てはまらない数列も試すべきだ、という教訓です。今回は、その教訓を実際に使ってもらいます。

もう一度、3つの数の規則を当ててください

出題者は、3つの数の並びについて、ある規則を決めています。2, 4, 6 はその規則に当てはまります。

あなたは「2ずつ増える3つの数」ではないかと考えました。この仮説を確かめるために、第1回の教訓どおり、あなたの仮説に当てはまらない数列を3つ書いてください。出題者は、それぞれが規則に当てはまるかどうかだけを答えます。

(書いてから先へ進んでください)

たとえば、1, 2, 3/3, 6, 9/2, 4, 7 と書いたとします。出題者の答えは、3つとも「当てはまらない」でした。

仮説に当てはまらないと予想した数列が、本当に当てはまらなかった。3回試して3回とも予想どおりです。仮説が壊れる機会をわざわざ作ったのに、壊れなかった。そろそろ「2ずつ増える」と宣言してもよさそうに思えます。

ところが、出題者の規則は「連続する偶数」、つまり 2, 4, 6/8, 10, 12 のように、偶数が2ずつ増える並びでした。1, 3, 5 は2ずつ増えますが、偶数ではないので当てはまりません。あなたの仮説は、正解より広すぎたのです。

そして、あなたが書いたような「仮説に当てはまらない数列」は、何回試しても、この間違いを教えてくれません。2ずつ増えない数列は、連続する偶数でもないからです。間違いを見つけられるのは、1, 3, 5 のような、自分の仮説に当てはまる数列だけでした。この状況は、今回読む論文が実際に挙げている例です。

ヒューマン
ヒューマン

ちょっと待ってや。第1回で「当てはまらん例を試せ」って教わったから、その通りにやったんやで。それで外れるって、どういうことやねん。

エコノ
エコノ

第1回の教訓が間違ってたわけやないねん。2-4-6課題では、あれで正しかった。ただ、「当てはまらん例を試す」ことと「自分の仮説が壊れそうな所を試す」ことは、いつも同じとは限らへん。それを最初にはっきり分けたんが、今回の論文や。

ヒューマン
ヒューマン

え、その2つって同じ意味ちゃうの?

エコノ
エコノ

2-4-6課題では、たまたま同じやったんや。今日はそこをほどいていこか。

ポジティブ・テスト方略とは?──今回読む原典

今回読んでいく原典はこちらです。

Klayman, J., & Ha, Y.-W. (1987). Confirmation, disconfirmation, and information in hypothesis testing. Psychological Review, 94(2), 211–228. https://doi.org/10.1037/0033-295X.94.2.211

この論文の結論(先にいいます):「確証バイアス」と呼ばれてきた現象の多くは、仮説が当てはまると予想される例を調べる +test 方略として理解できます。+test は反証を避けることと同じではなく、調べたい現象が珍しく、仮説の大きさがだいたい正しいという、現実によくある条件のもとでは、むしろ反証を見つけやすいやり方です。ただし2-4-6課題や4枚カード問題のように、条件によっては誤りを生みます。

確証バイアスは、ふつう「自分の考えを支持する情報ばかり集め、反する情報を探さない傾向」と説明されます。ところがこの言葉は、このシリーズの3回だけでも、反証になる例を試さない(第1回)、仮説に沿った質問を選ぶ(第2回)、都合の悪い研究を辛く評価する(第3回)と、少しずつ違うものを指してきました。今回の論文の著者たちも冒頭で、この言葉は研究者ごとに違う意味で使われてきたと指摘しています。

Klayman と Ha は、このうち「どの例を調べるか」という情報の集め方に的を絞り、そこで起きていることの多くをポジティブ・テスト方略(positive test strategy。以下、+test 方略)と呼び直しました。

+test 方略とは、関心のある性質が「ある」と予想される例、または「ある」とわかっている例を調べるやり方です。そしてこれは「自分の信念を裏づけてくれそうな例を探す」こととは同じではない、というのが論文の出発点です。

この論文には、新しい実験がありません。それまでの研究を、集合と確率という道具で整理し直した理論論文です。数式も出てきますが、式が苦手な方は結論だけ拾ってください。

先に用意する3つの用語

本文で使う道具を3つ、先に渡しておきます。

  • T と H:T は、本当に規則に当てはまる例の集まり(正解)。H は、あなたの仮説が「当てはまる」と予想する例の集まり。導入の課題なら、T=連続する偶数、H=2ずつ増える3つの数です。
  • +Htest と −Htest:+Htest は、仮説が「当てはまる」と予想する例(H の内側)を試すこと。−Htest は、「当てはまらない」と予想する例(H の外側)を試すこと。導入であなたがやったのは −Htest です。
  • 偽陽性と偽陰性:仮説が「当てはまる」と予想したのに当てはまらなかった例が偽陽性、「当てはまらない」と予想したのに当てはまった例が偽陰性です。どちらか1つでも見つかれば、その仮説は正解ではないとわかります。これが反証です。

途中で、H ではなく T の側から例を選ぶ検査(+Ttest と −Ttest)も出てきますが、それは必要になったところで説明します。

「反証を探す」には2つの意味がある:仮説と正解の5つの関係

エコノ
エコノ

ここからは図を1枚だけ使うで。仮説の円 H と正解の円 T がどう重なってるか。どっちの検査で反証が出るかは、それで全部決まるんや。

著者たちは、仮説 H と正解 T の関係を5通りに分けて図にしています(図1〜5)。それを1枚にまとめたのが次の図です。見てほしいのは、各パネルの下の2行、つまり +Htest と −Htest のどちらで反証が出るかです。

仮説(H)と正解(T)の5つの関係と、反証が出る検査(Klayman & Ha, 1987, 図1〜5をもとに作成)。①内包(仮説が狭すぎる、2-4-6課題):+Htestでは反証は出ない、−Htestでは出うる。②重なり:どちらでも出うる。③包含(仮説が広すぎる):+Htestでは出うる、−Htestでは出ない。④排反:+Htestは必ず反証、−Htestでも出うる。⑤一致:どちらでも反証は出ない

①内包は、第1回の2-4-6課題です。正解「増える3つの数」の中に、仮説「2ずつ増える」がすっぽり入っています。仮説に当てはまる数列は必ず正解にも当てはまるので、+Htest では反証が出ません。反証を見つけられるのは、5, 10, 20 のような「2ずつは増えないが、増えてはいる」数列を試す −Htest だけです。Wason はわざとこの状況になるように課題を作っていた、と著者たちは指摘しています。

③包含はその逆で、導入の課題がこれでした。仮説が広すぎるので、仮説の外側は必ず正解の外側です。−Htest は何回やっても予想どおり「当てはまらない」と返ってくるだけで、反証は +Htest でしか出ません。

②重なりなら、どちらの検査でも反証が出えます。④排反では +Htest が必ず反証になり、⑤一致(正解にたどり着いた状態)では、どちらの検査でも反証は出ません。

ここから著者たちが引き出すのは、「反証を探す」という言葉には、2つの別々の意味が混ざっているということです。

  • 意味1:仮説が「当てはまらない」と予想する例を調べること(−Htest)
  • 意味2:自分の仮説がいちばん壊れそうな例を調べること

Popper や Platt の科学哲学が勧めているのは、意味2のほうです。ところが実験研究は、意味1をしているかどうかで人を見てきました。2-4-6課題(①)ではたまたま意味1と意味2が一致しますが、③の状況では、意味1をまじめに実行するほど反証から遠ざかります。

ヒューマン
ヒューマン

つまり俺、導入で意味1をやってたわけか。それで意味2をやってるつもりになってた。

エコノ
エコノ

そういうこっちゃ。で、困るのはここからや。正解の円 T がどこにあるかは、調べる前にはわからへん。わかってたら苦労せえへんもんな。

ヒューマン
ヒューマン

ほな、どっちを試すか決めようがないやん。

エコノ
エコノ

それが、ある程度は見当がつく、っちゅうんがこの論文のいちばん面白いところや。

どちらが反証に当たりやすいか:珍しい現象なら「当てはまる例」が有利

著者たちは、正解 T がどこにあるかわからなくても、2つの数字があれば見当がつけられると言います。

  • p(t):調べたい現象が、全体の中でどれくらいありふれているか(基準率)。たとえば、星のうち惑星を持つものの割合
  • p(h):仮説が「当てはまる」と予想する例が、全体のどれくらいを占めるか

具体的な数字で見てみます(以下は説明のための架空の例です)。

ある病気について、1000人のうち将来この病気になるのは100人(p(t)=.10)だとします。あなたは「このリスク因子を持つ人がなる」という仮説を立てました。リスク因子を持つ人も100人(p(h)=.10)で、仮説の大きさは合っています。仮説はそこそこ当たっていて、リスク因子を持つ100人のうち60人が実際に病気になります。

次の表で見てほしいのは、1人調べたときに反証(予想外れ)に当たる確率が、どちらの検査で高いかです。

検査調べる人その中の予想外れ1人調べて反証に当たる確率
+Htestリスク因子あり(100人)病気にならなかった40人40/100=40%
−Htestリスク因子なし(900人)病気になった40人40/900≒4.4%

予想外れの人数は、どちらも40人です。ところが −Htest の40人は900人の中に散らばっているので、なかなか当たりません。+Htest のほうが、1人あたり約9倍、反証に当たりやすいのです。

著者たちは、エイズのリスクがないと思われている人の中からエイズの患者を探すことを、「干し草の山から針を探す」ようなものだとたとえています。

ヒューマン
ヒューマン

要するにどういうこと?ごっつい計算式出てきてあかんわ。

エコノ
エコノ

珍しいもんを調べるときは、「おりそうな所」を見たほうが、「おらんはずの所」を見るより、予想外れに出くわしやすいっちゅうことや。「おらんはずの所」は、とにかく広いからな。

仮説の大きさがだいたい正しい(p(h)≒p(t))とき
z⁺ ≒ z⁻ × (1 − p(t)) / p(t)
z⁺:+Htest で反証に当たる確率(偽陽性率)
z⁻:−Htest で反証に当たる確率(偽陰性率)

式が苦手なら飛ばしてください。言っていることは、p(t) が .5 より小さければ、つまり調べたい現象が少数派なら、+Htest のほうが反証に当たりやすい、ということです(p.217、式2)。上の例なら、(1 − .10)/.10=9倍です。

そして著者たちは、現実の仮説検証が扱うのは、たいてい少数派の現象だと言います。惑星を持つ星は約3分の1、統合失調症の有病率は1%未満、米国のエイズの発生率は1万分の1〜10万分の1と、当時の推定値を挙げています。

条件を整理したのが原典の表1です。表を読むときは、「現象が少数派か」と「仮説の大きさが現象と比べてどうか」の2点だけ見てください。

条件反証に当たりやすいのは
現象が少数派(p(t)<.5)で、仮説の大きさが現象と同じくらいか、やや大きい(p(h)は .5 以下)+Htest
現象が多数派(p(t)>.5)で、仮説の大きさが現象と同じくらいか、やや小さい(p(h)は .5 より大きい)−Htest
それ以外z⁺ と z⁻ の具体的な値しだい

この分析から、著者たちは2つの結論を出します。1つは、前の節で見た「反証を探す」の2つの意味を区別すべきだということ。もう1つは、2つの意味がどれくらい一致するかは環境の構造で決まり、よくある条件のもとでは、むしろ食い違うということです。だから +test 方略は、欠点はあっても、多くの場面で筋のよい確かめ方になりえます。

ヒューマン
ヒューマン

ほな、確証バイアスって、実はかしこいやり方やったってこと?

エコノ
エコノ

「かしこいこともある」までやな。いつもかしこいわけやない。2-4-6課題みたいに、+test では永遠に反証が出えへん場面もある。大事なんは、+test は反証を避けてるわけやない、っちゅうところや。

ヒューマン
ヒューマン

同じことやっても、場面によってかしこくもアホにもなるんか。

エコノ
エコノ

そういうこっちゃ。ほな、その目でこれまでの3回を読み直してみよか。

これまでの「確証バイアス」を読み直す:第1回〜第3回

著者たちは論文の後半で、+test 方略を物差しにして、それまで別々に研究されてきた課題を読み直しています。このシリーズで読んできた課題も、その中に入っています。

第1回の2-4-6課題:+test が裏目に出るように作られていた

2-4-6課題は、図の①内包でした。仮説「2ずつ増える」は正解「増える3つの数」の中にすっぽり入るので、+Htest は何回やっても「当てはまる」としか返ってきません。第1回で見た、誤答群が試行の96%で「当てはまる」と言われ続けたという結果は、この構造から来ています。

被験者がしていたのは「確証を求める」ことではなく、+test というふだんの確かめ方であり、Wason の課題はそれがちょうど裏目に出るように作られていた、というものです。

第1回の4枚カード問題:ここでは +test が本当に不適切

4枚カード問題は、事情が違います。「表が母音なら、裏は偶数」という規則を確かめるために、E・K・4・7 のどれを裏返すか。ここで、もう1組の検査が要ります。

2-4-6課題では、例を選ぶのは被験者で、それが規則に当てはまるかを答えるのは出題者でした。仮説の側から例を選ぶので Htest です。これとは逆に、答えがわかっている例を選んで、仮説の条件を満たしていたかを調べることもできます。著者たちはこれを Ttest と呼び、関心のある性質が「ある」とわかっている例を調べるのが +Ttest、「ない」とわかっている例を調べるのが −Ttest です。統合失調症と診断された人の生育歴を調べて、仮説の条件がそろっていたかを確かめるのが +Ttest にあたります。

4枚カードに当てはめると、E(母音)が +Htest、K が −Htest、4(偶数)が +Ttest、7(奇数)が −Ttest です。+test 方略なら E と 4、または E だけを選ぶはずで、実際にこの2つの選び方がもっとも多く報告されてきました。第1回で見た Wason (1968) の「p と q の2枚」がこれです。

ところが「P なら Q」という規則は、「P なのに Q でない」という1種類の例でしか破れません。だからこの課題で意味があるのは E と 7(+Htest と −Ttest)だけで、この課題では +test 方略は不適切だと、著者たちははっきり書いています。4 を裏返して何が出てきても、規則は破れないからです。

第2回の面接の質問:問題は +test ではなく「答えに差が出ない質問」

第2回の Snyder & Swann (1978) では、相手が外向的かどうかを確かめるよう言われた人が、「パーティーを盛り上げたいとき、何をしますか?」のような、外向的な人にふつう聞く質問を選びました。

著者たちによれば、これも +Htest です。「Aさんは外向的だ」という仮説は、「外向的な人にあてはまる特徴は、Aさんにもあてはまるだろう」という仮説でもあるので、外向的な人の特徴を尋ねるのは H の内側を試すことになります。

では何が問題だったのか。+Htest であることではなく、診断の役に立たない質問を、役に立つ質問と取り違えたことだと言います。パーティーを盛り上げる方法を聞かれれば、内向的な人も外向的な人も、質問の前提を受け入れて似たような答えを返すことが報告されています。どちらの性格でも同じ答えが返る質問は、何も教えてくれません。

ヒューマン
ヒューマン

第2回の後記で、外向的な人に「パーティーのどこが好き?」て聞くんは会話として自然や、って話あったやん。あれ、+test 自体は悪ないってことになるんか。

エコノ
エコノ

この論文の読み方ではそうなるな。悪いんは、答えがどっちでも同じになる質問で「確かめた」気になることや。ただな、それで第2回の実験の後半まで片づくと思たらあかんで。

ヒューマン
ヒューマン

どういうこと?

エコノ
エコノ

Klayman と Ha が読み直してるんは、どの質問を選ぶか、っちゅうところまでや。その質問で相手のふるまいまで仮説の方向に寄っていった、っちゅう第2回のもう半分には、この論文は踏み込んでへん。

第3回の証拠の読み方:この論文の射程の外

第3回の Lord, Ross & Lepper (1979) は、死刑の賛成派と反対派が同じ研究を読み、それぞれ自分に合う研究を高く評価した、という研究でした。これは「どの例を調べるか」ではなく、手元に来た証拠をどう解釈するかの偏りです。

Klayman と Ha は、自分たちが扱ったのは仮説を確かめるための情報の集め方であり、集めた結果をどう解釈するかは、より広い問題として残っていると書いています。その例として挙げているのが Lord et al. (1979) です。つまり第3回の現象は、この論文の +test 方略の分析の外にあります。著者たちはこれを、残された広い問題として名前を挙げるにとどめています(p.225)。

この時点で言えること:第1回の2-4-6課題は +test がちょうど裏目に出る設計、4枚カード問題は +test が本当に不適切な課題、第2回の面接での問題は +test そのものより、答えに差が出ない質問でした。第3回の解釈の偏りは、この論文の射程外。「確証バイアス」というひとつのラベルの下に、性質の違うものが並んでいたことになります。

なぜ +test に頼るのか:手がかりが乏しく、負荷が高いときの「既定値」

では、人はなぜ +test 方略をとるのでしょうか。著者たちの答えは、+test は課題に固有の手がかりがないときや、頭への負荷が高いときに頼る、汎用の既定の方略(default heuristic)だというものです。

汎用の道具なので、多くの場面ではそれなりに働きます。前の節で見たとおり、珍しい現象を、だいたい合った大きさの仮説で調べるなら、+test は反証を見つけやすいやり方です。現実の損得がからむ場面では、+test のほうが −test よりコストやリスクが小さいことも多いと付け加えています。一方で、課題の構造に合わないときには、2-4-6課題のように系統的な誤りを生みます。

ヒューマン
ヒューマン

結局、脳がサボってるってことちゃうの?

エコノ
エコノ

サボりっちゅうより、いつもの道具やな。たいていはそれでうまくいく。ただ、この論文が示したんは「うまくいく条件がある」っちゅうところまでで、人がその条件を見分けて使い分けてるかどうかは、まだわからんのや。

まとめ

この記事のまとめ

言えること

  • 「確証バイアス」と呼ばれてきた現象の多くは、仮説が当てはまると予想される例(または、当てはまるとわかっている例)を調べる +test 方略として理解できる
  • 「当てはまらない例を試す(−Htest)」ことと「仮説が壊れそうな例を試す」ことは別物で、どちらで反証が出るかは仮説と正解の関係で決まる。2-4-6課題は −Htest でしか反証が出ない設計だった
  • 調べる現象が少数派(p(t)<.5)で、仮説の大きさがだいたい合っていれば、+Htest のほうが反証に当たりやすい(本文の架空の例では 40% 対 4.4%)

言えないこと

  • 「人は合理的に確かめている」とは言っていない。人が条件を見きわめて +test を選んでいるとは主張しておらず、4枚カード問題では +test は不適切だとしている
  • 証拠をどう解釈するかの偏り(第3回)や、質問が相手のふるまいを変える現象(第2回の後半)は、この論文の分析の外にある

日常への接続:あなたが書いた「当てはまらない3つの数」

導入で、あなたは第1回の教訓どおり、仮説に当てはまらない数列を3つ書きました。その3つは、仮説が広すぎるという間違いを、どれだけ試しても教えてくれない数列でした。あのときのあなたは、反証を探しているつもりで、反証が出ない場所を探していたことになります。

第1回の教訓が間違っていたわけではありません。教訓の中に、「仮説の外側を試す」という手段と、「仮説が壊れそうなところを試す」という目的が、ひとつに溶けていたのです。

この区別が日常の判断にどう現れるかの例も挙げています。採用担当者が「できない人を採ってしまうこと」を何より恐れるなら、採用すると判断した人を確かめる +Htest に重きを置くのが筋です。+Htest は偽陽性を見つける検査だからです。逆に、重い感染症の診断では、見逃し(偽陰性)のほうが重大なので、陰性と判定された人を調べる −Htest に重きを置くべきです。

どちらの検査が「正しい」かは、決まっていません。決めるのは、調べたい現象がどれくらいありふれているか、どちらの間違いが重いか、そもそもどちらの検査ができるのか、という状況の側です。「当てはまらない例も試せ」は、2-4-6課題では正しく、導入の課題では空振りでした。

執筆後記──見立てに沿って聞くのは、人づきあいの技術かもしれない

第2回の後記で、私は、相手の印象を肯定するような質問をすることは、人間社会で生きていくうえで必要なスキルでもあると書きました。

そう考えると、私が第2回で「空気を読む」側に置いたふるまいと、論文の言う +test は、同じ行動を別の角度から見ているのかもしれません。「パーティーではどうやって盛り上げるんですか?」も「人見知りするほうですか?」も、相手について自分が持っている見立てに沿った問いです。見立てが当たっていれば会話は滑らかに進み、外れていれば、たいてい相手が「いや、実は…」と訂正してくれます。+Htest は、人間関係を円滑に進めながら情報も集められる道具だ、と言えるのかもしれません。

一方で、2-4-6課題のように、+test では永遠に間違いに気づけない場面があることも、この論文は教えてくれます。仲間内の雑談なら、見立てに沿った問いで十分でしょう。けれど、子どもを「人見知り」と見立てたときや、人を採るかどうかを決めるときのように、見立てが外れたときの代償が大きい場面では、見立ての外側も一度のぞいてみる。頭の中に仮説と真実のベン図を書きながら、問いを立てる、なんてことも案外良い作戦に思えてきました。

補足事項

本文で触れた +Ttest です。著者たちは Htest と同じ論理で、現象が少数派で仮説の大きさがだいたい合っていれば、+Ttest のほうが −Ttest より反証に当たりやすいことを示しています(表2、p.218)。

さらに同じ条件のもとでは、仮説の条件がそろえば現象が起きるか(十分性)を確かめたいなら −Ttest より +Htest が、現象が起きるときには条件がそろっているか(必要性)を確かめたいなら −Htest より +Ttest が有利です。竜巻の研究者が、竜巻が起きそうな気象条件の地域と、実際に竜巻が目撃された地域に調査を集中させるのは、この意味で理にかなっていると著者たちは述べています。+Htest と +Ttest を合わせたものが、論文の言う +test 方略の全体です。

参考文献

確証バイアスの原典シリーズ一覧

この記事はシリーズ「確証バイアスの原典をたどる(全5回)」の4本目です。

原典で殴るシリーズ(薄味まとめに飽きた人向け)

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