確証バイアスを原典から解説|全4回シリーズ+Q&A9選

確証バイアス 原典5本を読む 1960–1987 シリーズまとめ+Q&A 原典解説
このシリーズでわかること

  • 「見たいものしか見ない」と説明される確証バイアスが、原典ではどんな実験で捉えられたのか
  • 仮説を確かめる「例の選び方」「質問の仕方」「証拠の読み方」で、それぞれ何が起きていたのか
  • 「当てはまる例を調べる」ことは、本当に反証を避けることなのか
  • 「確証バイアス」というひとつのラベルの下に、何が並んでいたのか

30秒でわかる確証バイアス

確証バイアス(confirmation bias)は、ふつう「自分がすでに持っている仮説や信念に合う情報ばかりを探し、合わない情報を探しに行かない傾向」と説明されます。

このシリーズは、その一行の背後にある原典5本を、全4回で読みました。Wason (1960/1968) では、人が自分の仮説を壊しに行かないこと。Snyder & Swann (1978) では、仮説を確かめるための質問が、相手の答えまで仮説の方向に寄せて聞こえさせること。Lord, Ross & Lepper (1979) では、同じ証拠を読んでも評価が立場で割れ、意見の差が開くこと。

そして第4回の Klayman & Ha (1987) が、このラベル自体を問い直します。仮説に当てはまる例を調べること(+test 方略)は、反証を避けることと同じではなく、条件しだいでむしろ反証に当たりやすい。そう読み直すと、「確証バイアス」というひとつのラベルの下には、性質の違うものが並んでいたことが見えてきます。

通説の一行ではなく原典に当たり、どこまで言えるのかを切り分ける。それがこのシリーズです。

このシリーズについて

狙い:「確証バイアス」は、「見たいものしか見ない」の一言で説明されることの多い言葉です。けれど原典をたどると、この言葉の下には、仮説を確かめる例の選び方、相手への質問の仕方、手元の証拠の読み方という、別々の現象が並んでいます。しかも Wason も Snyder & Swann も Lord らも、論文の中心に置いた言葉は「確証バイアス」ではありませんでした。このシリーズは、このラベルをいったん暫定的に使って原典を読み、最後にラベルそのものを見直します。

対象読者:確証バイアスという名前は知っていて、「結局、何がどこまでわかっているのか」を原典で確かめたい人。論理や統計の予備知識がなくても読めるように書いています(第4回だけ、集合と確率の話が少し出てきます)。

読む順:頭から順に読むのがおすすめです。第4回は第1〜3回を読み直す回なので、最後に読むといちばん効きます。関心別に入るなら、下の見取り図の「こんな人はここから」を目安にしてください。

シリーズ全体の見取り図

#記事扱う原典キーワードこんな人はここから
12-4-6課題と4枚カード問題Wason (1960)/Wason (1968)2-4-6課題、4枚カード問題、反証、消去的帰納自分の仮説を「確かめた」つもりになりがちな人
2確証バイアスは相手を変える?Snyder & Swann (1978)確証的な仮説検証方略、行動による確証、面接面接や人づきあいでの「決めつけ」が気になる人
3確証バイアスと極化Lord, Ross & Lepper (1979)偏った同化、態度の極化、死刑の抑止力SNSや議論で、話すほど意見が割れる理由を知りたい人
4確証バイアスは本当にバイアスか?Klayman & Ha (1987)ポジティブ・テスト方略(+test)、反証の2つの意味、基準率「確証バイアス=悪」という説明に違和感がある人

発展:第4回で、ラベルが分け直される

第1〜3回は、「確証バイアス」を暫定的なラベルとして置き、舞台を広げていく回です。探す(どの例を試すか:Wason)、聞く(どんな質問をするか:Snyder & Swann)、読む(手元の証拠をどう評価するか:Lord ら)。第4回の Klayman & Ha (1987) が、ここで向きを変えます。「当てはまる例を調べる」ことと「反証を避ける」ことを切り離し、それまで一括りにされていた現象を分け直しました。

回何が起きていたか第4回での読み直し
第1回 2-4-6課題仮説に合う数列ばかり試し、間違いに気づけない+test がちょうど裏目に出るように作られた課題(仮説が正解の内側にすっぽり入っている)
第1回 4枚カード問題p と q を選び、not-q を選ばないここでは +test が本当に不適切(意味があるのは p と not-q だけ)
第2回 面接の質問仮説に合う人向けの質問を選ぶ問題は +test そのものより、どちらの性格でも同じ答えが返る質問。質問が相手のふるまいまで寄せた後半は分析の外
第3回 証拠の評価都合の悪い研究を辛く評価する情報の集め方ではなく解釈の偏りで、この論文の射程の外
ヒューマン
ヒューマン

第4回で「確証バイアスは実はかしこいやり方やった」ってひっくり返ったんやろ?

エコノ
エコノ

ひっくり返ったんとちゃう。分け直したんや。「当てはまる例を調べる」のと「反証を避ける」のは同じやない、っちゅうのが第4回の出発点やねん。

ヒューマン
ヒューマン

どう違うん?

エコノ
エコノ

「反証を探す」には2つの意味が混ざっとる。仮説の外側を試すことと、仮説がいちばん壊れそうな所を試すこと。2-4-6課題ではたまたま一緒やったけど、いつも一緒とは限らへん。

ヒューマン
ヒューマン

ほな、第2回と第3回はどうなったん?

エコノ
エコノ

第2回の質問選びは +test で読み直せる。けど、質問で相手のふるまいまで寄っていった後半と、第3回の証拠の読み方は、第4回の分析の外や。ひとつのラベルの下に、性質の違うもんが並んどった。そういうこっちゃ。

各記事の簡単まとめ

第1回|Wason (1960)・Wason (1968):仮説を壊しに行かない

確証バイアスの出発点とされる2本の論文です。2-4-6課題で最初の宣言で正解できたのは29人中6人で、正解した人と外した人を分けたのは、自分の仮説に合わない数列を試した比率(1.79 対 0.24)でした。4枚カード問題では半数が p と q の2枚だけを選び、反証になりうる not-q を選んだのは16.7%。反証事例を正しく答えられる訓練を受けた直後でも、選び方はほとんど変わりませんでした。

ただし、扱ったのはいずれも抽象的な記号・図形の課題で、初回の誤答がすべて反証の回避によるとまでは言えません。

→記事を読む:確証バイアスの原典|2-4-6課題と4枚カード問題をWasonの論文で読む

第2回|Snyder & Swann (1978):質問が、相手の答えを寄せる

相手が外向的かを確かめるよう頼まれた人は外向的な人に向けた質問を、内向的かを確かめる人はその逆を多く選びました。その質問で実際に面接すると、答えた側のふるまいは、仮説も質問も知らない第三者の耳に、仮説の方向で聞こえました。相手が外向的である見込みは低い(30人中7人)と教えても、25ドルの賞金を出しても、質問の選び方は変わりませんでした。

示されたのは、その面接での答えがどう聞こえたかまでです。「質問が相手の性格を変えた」という言い方は、原典の射程を超えます。

→記事を読む:確証バイアスは相手を変える?|Snyder & Swann (1978)の面接実験

第3回|Lord, Ross & Lepper (1979):同じ証拠で、差が開く

死刑の賛成派と反対派に、抑止力を支持する研究と否定する研究を1本ずつ読ませると、どちらも自分の立場に合う研究の出来と説得力を高く評価しました。混ざった証拠を読み終えたあと、賛成派は「より賛成に」、反対派は「より反対に」なったと報告しています。結果カードだけなら両派とも研究の結論の方向に動き、大きく割れたのは手続きや批判まで読んだあとでした。

極化は本人が答えた変化で、著者自身が留保をつけています。また著者たちは、信念に照らして証拠を評価すること自体は不合理ではないとし、問題を、そうして処理した証拠をその信念の補強にすぐ使ってしまうことに置いています。

→記事を読む:確証バイアスと極化|同じ証拠を読んでも差が開く理由(Lord 1979)

第4回|Klayman & Ha (1987):「確証バイアス」を分け直す(転回点)

新しい実験のない理論論文です。「確証バイアス」と呼ばれてきた現象の多くを、仮説が当てはまると予想される例を調べる +test 方略として捉え直しました。「仮説の外側を試す」ことと「仮説が壊れそうな所を試す」ことは別物で、調べたい現象が少数派で仮説の大きさがだいたい合っていれば、+test のほうがむしろ反証に当たりやすくなります。

ただし「人は合理的に確かめている」とは言っておらず、4枚カード問題では +test は不適切だとしています。第3回の解釈の偏りと、第2回の後半(質問が相手のふるまいを寄せたこと)は、この論文の分析の外にあります。

→記事を読む:確証バイアスは本当にバイアスか?|Klayman & Ha (1987)を読む

よくある疑問・モヤモヤ Q&A

Q1. 確証バイアスとは、結局何ですか?

一般には「自分の仮説や信念に合う情報ばかりを探し、合わない情報を探しに行かない傾向」と説明されます。ただ、このシリーズで読んだ原典では、この言葉が少しずつ違うものを指していました。反証になる例を試さない(第1回)、仮説に沿った質問を選ぶ(第2回)、都合の悪い研究を辛く評価する(第3回)。第4回の Klayman & Ha も、この言葉は研究者ごとに違う意味で使われてきたと指摘しています。「何を確かめる場面の話か」を分けて読むのがおすすめです。

【関連記事】 第4回(Klayman & Ha 1987)

Q2. 確証バイアスは、実は合理的なやり方だったんですか?

【論文が言える範囲】 仮説に当てはまる例を調べる +test 方略は、反証を避けることと同じではありません。調べたい現象が少数派で、仮説の大きさがだいたい合っていれば、+test のほうが反証に当たりやすい(第4回の架空の例では 40% 対 4.4%)。多くの場面で筋のよい確かめ方になりうる、というのが第4回の主張です。

【言えない・注意】 「人は合理的に確かめている」とまでは言っていません。人が条件を見きわめて +test を選んでいるとは主張しておらず、4枚カード問題では +test は不適切だとしています。証拠の解釈の偏り(第3回)は、この分析の外です。

【関連記事】 第4回(Klayman & Ha 1987)・第1回(Wason 1960/1968)

Q3. 質問のしかたで、相手の性格まで変わってしまうんですか?

【論文が言える範囲】 仮説に沿った質問で面接された相手の答えは、仮説も質問も知らない第三者の耳に、仮説の方向で聞こえました(外向的・自信がある・エネルギッシュなどの項目と、10項目の合計で差)。面接者が手にした「証拠」の少なくとも一部は、面接者自身の質問が引き出したものでした。

【言えない・注意】 「性格が変わった」とは言えませんし、著者たちも言っていません。評定は、その面接の中でのふるまいについてです。答えの中身だけが引っぱられたのか、声の調子まで変わったのかも、このデータでは分けられません。

【関連記事】 第2回(Snyder & Swann 1978)・第4回(Klayman & Ha 1987)

Q4. 同じ証拠を読んだら、意見は本当に極端になったんですか?

【論文が言える範囲】 賛否の混ざった証拠を読み終えたあと、賛成派は「より賛成になった」、反対派は「より反対になった」と答えました。2つの研究の評価に大きな差をつけた人ほど、意見の動きも大きいという関係もありました(r=.56)。

【言えない・注意】 これは参加者自身が「開始時より賛成(反対)になった」と答えた変化で、意見が「本当に」極端になったとまでは言えません。著者自身もこの点に留保をつけています。また参加者は立場のはっきりした大学生だけで、信念の弱い人に同じことが起きるかは、この実験からはわかりません。

【関連記事】 第3回(Lord, Ross & Lepper 1979)

Q5. 「反証を探せ」と言われても、具体的に何をすればいいんですか?

第1回の教訓は「仮説に当てはまらない例も試せ」でした。ところが第4回によれば、「反証を探す」には2つの意味が混ざっています。仮説が当てはまらないと予想する例を試すこと(−Htest)と、仮説がいちばん壊れそうな例を試すことです。2-4-6課題ではたまたま一致しますが、仮説が正解より広すぎる場合(第4回の導入の「連続する偶数」)には、仮説の外側をいくら試しても間違いは見つかりません。目指すべきは後者で、どこを試せば壊れるかは、仮説と正解の関係しだいです。

【関連記事】 第1回(Wason 1960/1968)・第4回(Klayman & Ha 1987)

Q6. 気をつけたり訓練したりすれば、直りますか?

このシリーズで読んだ手続きでは、なかなか崩れませんでした。第1回の4枚カード問題では、反証事例を答える訓練で全員が正解したのに、直後の選択はほとんど変わりませんでした。「7 の裏に D があれば規則は偽になる」と自分の口で言えた8名のうち、選び直しで 7 を加えたのは3名です。第2回では、相手が外向的である見込みが低い(30人中7人)と教えても、25ドルの賞金を出しても、質問の選び方は変わりませんでした。

【関連記事】 第1回(Wason 1960/1968)・第2回(Snyder & Swann 1978)

Q7. 頭のいい人なら、引っかからないのでは?

第1回の2-4-6課題の参加者は心理学部生、第3回は大学生でした。それでも、各回で見た結果が出ています。Wason 自身は1968年の論文の結びで、頭のいい大人でも、こうした形式的な推論の力がまだ育ちきっていないのではないかと問うています。

【関連記事】 第1回(Wason 1960/1968)

Q8. データを見せれば、議論は合意に近づきますか?

第3回の結果は、その期待に待ったをかけます。結果カードだけを読んだ段階では、賛成派も反対派も研究の結論の方向に動いていました。データそのものには、人はちゃんと動かされています。割れたのは、手続きや批判まで読んだあとでした。著者たちは論文の最後で、決め手に欠ける研究しか出せない社会問題では、研究は論争を鎮めるより、むしろ燃え立たせることが多いだろうと書いています。

【関連記事】 第3回(Lord, Ross & Lepper 1979)

Q9. 日常では、確証バイアスとどう付き合えばいいですか?

第4回の答えは「どちらの確かめ方が正しいかは、状況が決める」です。採用担当者が「できない人を採ってしまうこと」を何より恐れるなら、採用すると判断した人を確かめる +Htest に重きを置くのが筋です。重い感染症の診断のように見逃しが重大な場面では、陰性と判定された人を調べる −Htest に重きを置くべきです。

ここからは筆者の考えです。見立てに沿って聞くことは、人づきあいを円滑にする技術でもあります。仲間内の雑談でわざわざ反例を持ち出す必要はないでしょう。ただ、見立てが外れたときの代償が大きい場面では、一度だけ見立ての外側をのぞいてみる。そのくらいの付き合い方が、全4回を読んだうえでの現実的な落としどころだと思います。

【関連記事】 第4回(Klayman & Ha 1987)・第2回(Snyder & Swann 1978)

このシリーズのまとめ

  • 確証バイアスの原典とされる論文は、いずれも「確証バイアス」という言葉を中心に置いていない
  • 探す(Wason):人は仮説を壊しに行かず、反証事例を答える訓練の直後でも選び方はほとんど変わらなかった
  • 聞く(Snyder & Swann):仮説に沿った質問で面接すると、相手の答えは第三者の耳にも仮説の方向で聞こえた(性格を変えたとは言えない)
  • 読む(Lord ら):同じ証拠の評価が立場で割れ、本人の報告では意見の差が開いた
  • 分け直す(Klayman & Ha):当てはまる例を調べることは反証を避けることと同じではなく、条件しだいで有効にも裏目にもなる
  • 「確証バイアス」というひとつのラベルの下に、性質の違うものが並んでいた

参考文献(シリーズ共通・回ごと)

第1回

第2回

第3回

  • Lord, C. G., Ross, L., & Lepper, M. R. (1979). Biased assimilation and attitude polarization: The effects of prior theories on subsequently considered evidence. Journal of Personality and Social Psychology, 37(11), 2098–2109. https://doi.org/10.1037/0022-3514.37.11.2098

第4回

原典で殴るシリーズ(薄味まとめに飽きた人向け)

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